Rocks Final

BACCHUS
 Guitars 島山信和
 Bass   スティング宮本
 Drums  未来敦史
 Saxophones SMILEY
12/09 名古屋 CLUB QUATTRO

     12.9.photo

01. これでも食らえ
02. Bad Dream
03. Hustler
04. 気をつけたほうがいいぜ
05. ついてねえや
06. Crying Bee
07. Escape
08. FILM GIRL
09. Blind Love
10. 裏窓
11. ひまわり
12. 傷だらけの天使
13. 紫の夜明け
14. HEAT OF THE NIGHT
15. Aspirin
16. NO GOOD!
17. これでも食らえ!〜Reply

E1. いつか河を越えて

E2. カーニバル
E3. Hot Butter
E4. 俺は帰って来たんだ

E5.祈り

Rocks Finalのライヴ会場で配られた卓治からのメッセージ

大切な“今夜”のために

 やあ、元気? 今夜は来てくれてありがとう。きっと君は今、会場の片隅でドリンク片手にこれに目を通していることだろう。俺は楽屋でメンバーと冗談でも言いながら、そろそろ始まろうとしている今夜のためのスペシャルな興奮を高めているところだと思う。楽屋のドアの向こうからは、音楽に混じって会場のざわめきが聞こえる。

 俺がこのバンドの連中とステージに立ち始めてちょうど1年になる。BACCHUS(バッカス 神話の中に出てくる酒の神様の名前)と名づけたこいつらと、この1年汗だくになってたくさんのステージで音楽を作りあげてきた。そこでできあがったサウンドは、俺が今まで組んできたどのバンドよりもパワフルでテンションの高いものになったと自負している。今夜も君の腰をしびれさせる曲をたくさん用意した。俺達の準備は万端だ。君がそれを楽しんでくれれば本当に嬉しいよ。

 俺はいつもこう考えている。CDは俺から君への手紙。ライヴは君とのデート。俺から一方的に手紙を書くだけじゃつまらない。君がそれをどう感じてくれたかを知りたい。だから君に会いに来た。君の顔が輝いてくれたら、俺の気持ちが伝わったんだと思うことができる。

 以前こんな手紙をもらった。
 「ライヴ見に行っても、その空気に飲まれないようにギリギリに外れて卓治を見てた。でもそうやってラインを引いてしまうと、引いて間隔をあけた分だけ自分の中にも変な穴があいちゃって、その中にビュービュー風が入ってきちゃって、やたら寒くて。それで何となく“ライヴつまんない”って思いこませて冷静さを装っていた」

 なぜ? 俺には分からない。今夜のためにチケットを買って、もしかしたらちょっとお洒落もして出かけてきたのに、楽しめないなんて変だ。俺は今夜君に会えるのをずっと前から楽しみにしてきた。服を選んで、気の利いたジョークもふたつばかり準備して、今は最後の仕上げで鏡に向かって髪を整えているところだ。俺が君に“元気?”と言う。君も軽く“元気”と答えてほしい。君と俺が長いつき合いだったとしても、今夜が初対面だったとしても、そんなこと関係ない。今夜は俺と君の大切な夜なんだから。

 さて、楽屋を見渡すと、ドラムの未来(みき)とベースのスティングが着替えを始めている。ギターの島ちゃんはさっきまでハンバーガーをぱくついていたけど、今はギターを手に取りフレーズを確かめている。サックスのスマイリーは軽く屈伸をして体をほぐしている。俺はといえば、ジャケットを着こみ、深呼吸をふたつ。
 空気が張りつめていく。パワーが凝縮し、爆発の瞬間を待っている。さあ、ショーの始まりだ。もう何も言うことはない。楽しもうぜ!

                                                  小山卓治