君に話したいことがあるんだ
君に話したいことがあるんだ。
すべては一瞬に始まった。それが恋だと僕にはすぐに分かっ
た。その瞬間に僕が感じていたものを君も感じていたと思う。
濃密な空気が流れた。それを愛と名づけることができると信じ
た。
愛は瞬間に生まれる。でも愛は育てなければいけない。生ま
れっぱなしの愛は赤ん坊のようなものだ。自我の固まりで、求
めることしかできない。そんな愛はひと晩でしぼんでしまう。
僕らはそんなはかない出会いや事件をくり返しながら、今まで
この街で何とか生き延びてきた。でも、もうそろそろしっかり
とこの手につかめるものが欲しくなったんだ。僕はこの愛を育
てたい。
僕は君に告白しなくてはいけない罪が山ほどある。
僕はいつまでたっても大人になりきれない。僕はいつでも不
完全なままだ。なぜなら僕は誰かを特別な存在にしてあげるこ
とができない。子供が駄々をこねるように、僕はいつも自分が
1番だった。思いやる気持ちも持ってはいるが、自分の調子の
いい時だけの話だ。僕は心の底から誰かに優しくしたことなん
て1度もなかった。僕は自分が傷つけられるよりもはるかに多
く人を傷つけた。未熟さゆえの罪をたくさん犯してきた。これ
からも罪を重ねていくだろう。でも、もし君と一緒にいること
ができれば、無意識に犯す罪だけは免れることができるかもし
れないと思い始めている。
抱きしめる力よりも、奪いとる力よりも、優しさの方がまさ
っていることを僕は初めて知った。だからもう愛することを恐
いとは思わない。僕は完全じゃない。君と2人でひとつになろ
うなどと傲慢なことを考えているのでもない。ただ、君といる
と優しい気持ちになれるんだ。
こんな告白は君好みじゃないかもしれない。でも君も、力ず
くで手に入れたものがその瞬間に指の間からこぼれ落ちるのを
知っている。だから僕の気持ちを理解してくれるはずだ。
君のことを知りたいんだ。僕のことを分かって欲しいんだ。
愛しあう前に話をしようよ。それから愛しあおう。そしてまた
話をしよう。それからもう1度愛し合おう。愛はそうやって少
しずつ成長していくはずだ。僕らは似た部分をたくさん持って
いる。でも僕らの道のりは決して楽なものにはならないだろう。似た部分を見せあって安心するのが愛じゃない。違った部分を
克服していくのが本当の愛だ。
青臭い考えだと思うかい? 僕はちっともそうは思わないよ。初めから成熟した愛が存在しない限り、1から始めるしかないじゃないか。
僕らがなぜ出会ったのかは、遠い未来に2人の愛が実を結んだときに初めて分かることだ。そしてそこに僕らの明日がある。
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