passing Jackets
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Passing


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Passing

NG Jackets
[収録アルバム]
Go To Zero
-Shibuya Live Inn 1986/12/12-
裏窓

詞:小山卓治 曲:小山卓治


白い紙のバラをテーブルの上でひとまとめにすると
少女は決まって窓を開けはなして通りを眺める
赤いレンガ造りの古いアパート 西向きの小さな窓
少女は首を肩にめりこませ瞳は何も見ていない
通りを隔てた真向かいの閉ざされたアパートの窓
初めての恋が始まったのは
ある日そこでカーテンが揺らめいてからのこと

広場の時計が朝の空に響いて8時を知らせると
男は必ずその窓に立ちぼんやり外を眺める
リンゴみたいに赤い口紅を少女は初めて買った
青アザ色のスカートを脱いで少しだけ笑ってみる
束ねた髪を下ろし勇気を出して窓際へ
だけど男は髪をかきながら
まるで誰かを待ってるみたいに遠くを見てる

やがて男の窓にふたつ目の影がちらつき始める
少女の耳には笑い声すら聞こえるような気がする
朝の8時 男に寄りそって大きな瞳が笑う
ショートカットの髪をかきあげ胸元の開いたブラウス
花びらを作るためのハサミを取りだして
少女は長い髪を切り落とし
ブラウンのシャドーを指で塗りつけた

ある晩ガラスの砕ける音がした
カーテンに写るふたつの影がすれ違う
少女はベッドの中で身を固くしてる
真夜中過ぎ 通りをパンプスの音が遠ざかる

次の朝になっても男の窓は閉ざされたままで
風に揺らめくはずのカーテンもとり外されてる
少女は鏡の前で最初に顔を白く塗りつぶす
真っ赤な唇 ピンクの丸い鼻 黄色の縁取り
最後の仕上げに空色の涙をふた粒
そして両手を広げ少女は窓に向かっておじぎをひとつ

その晩ガラスの砕ける音がした
カーテンに写るひとつの影が踊ってる
テーブルの上で赤く染まった花びら
真夜中過ぎ 通りをサイレンの音が遠ざかる

 


(c)1985 Takuji Oyama / NAKAYOSHI GROUP