2006年1月〜7月

dear #47
 2006年に入って初めての「dear」。今年もよろしくね。
 《Bootleg! Vol.5》のネット販売をスタートした。サックスプレイヤーSMILEYとのテイクを6曲セレクトした。
 《Bootleg!》はCD-Rで制作している。僕は、CD-RとCDとの間に差異を感じていない。ハードとネットワークが発達したことで、音楽は作ったその日に手渡しできるほど、作り手の僕と聴き手のみんなとの間の距離を埋めた。内容のクオリティに違いはないし、何ものにも縛られない自由な発想が可能になった。
 フットワークをフルに活用できる新しい方法論で作った《Bootleg!》は、僕の正式なライヴアルバムだ。
 さらに、この《Bootleg!》は、ライヴへのインビテーションでもある。
 「昔はよくライヴに行ったけど、最近は忙しかったりで足が遠のいちゃってます」とか、「懐かしいライヴの音を聴けて、あの頃のことが蘇りました」という便りを、《Bootleg!》を買った人たちからもらった。
 時間と余裕ができたら、ぜひライヴ会場に遊びに来てほしい。僕は何も変わっていない。変わらない君の歌声を聴かせてほしい。

1/12
love,
卓治


dear #48
 〈Naked“eyes”〉というタイトルをつけたイベントが近づいてきた。ゲストとのセッションも含め、今からワクワクしている。
 このタイトルでライヴをやるのは今回が初めてで、会場のYEBISU ∞ Switchでやるのも初めて。〈Naked“eyes”〉は、まったくの生音だけでライヴをやるスタイルとして、東京だけじゃなく、今後何らかの形でシリーズにしていきたいと思っている。
 実は以前、音楽ライターの角野恵津子さんのイベント企画に招かれて、生音だけのライヴをやったことがあり、そのパクリでもある。
 その時、初めて生でライヴをやったんだが、目の前にマイクがないのがこれほど心細いものかと自分でも驚いた。リバーブなどのエフェクトに頼らずに歌を裸にするのは、最初はすごく難しかった。だけど考えるまでもなく、これこそが本来の歌の姿だ。
 夜の窓辺にたたずむ恋人に歌いかける吟遊詩人よろしく、裸の歌を裸の声で歌い、それが直接、会場に来てくれた人の耳に響く。いつものライヴとはまったく違う空気が流れるはず。すごく楽しみだ。

1/25
love,
卓治


dear #49
 〈Naked“eyes”〉は、予想以上に充実したライヴになった。衣擦れの音さえ邪魔になるほどの空気の中での裸の歌、マーチンやグランドピアノの生の響き、そしてゲストとのそれぞれの世界、最後は2階からSMILEYが登場して客席が爆発。
 たくさんの反響ももらった。
「声を出してる方から声が聞こえる、楽器から音が聞こえるという当たり前のことが新鮮だった (BBS)」
「ピアノの鍵盤にあたる爪の音まで聞こえた (ONEへのメール)」
 人は、小さな音しか出ていなければその小さな音をちゃんと聞き分ける。爆音を聞いた後には小さな音には反応できない。それが人の耳だ。
 ライヴをやり終え、またひとつ新しい発見をしたような気がする。
 その夜から《Bootleg! Special One Night》のリリースも始めた。今まで《Bootleg!》には入ってなかったMCがたっぷり入ってる。もちろん歌もね。
 そして九州ツアー。大分のCOCK'S、さらにSMILEYの登場で、とんでもなく盛り上がりそうだ。
 何だか楽しくなってきたぞ。

2/13
love,
卓治


dear #50
 3/15からの大分、福岡、熊本のライヴが近づいてきた。大分と熊本には、去年一緒にプレイした大分のCOCK'Sが、熊本はそれに加えてサックスのSMILEYが参加することになった。
 福岡は1年半ぶり、熊本はほぽ2年ぶりになる。今からテンションが上がってる。
 セットリストを決めるため、全曲のリストへ、ここ数年の間に各都市で歌った曲に印をつけていく。歌ってない曲がまだまだたくさんある。23年の間に新曲も含めて120曲くらい作ったからね。その中から何を歌うか、贅沢で楽しい悩みだ。リクエストがあったら、このメールに返信という方法で、ぜひ送ってほしい。
 全曲リストを眺めていると、よくまあこれだけ作ったなという気持ちと同時に、僕の胸の奥でうずうずと出番を待っている、新しい歌の息吹を感じる。作っても作っても、歌っても歌っても、ゴールは見えないだろう。そもそもゴールなんてないんだと思う。歌が生まれる限り、聴いてくれる人がいる限り、そこは出発点だ。

3/2
love,
卓治


dear #51
 『AERA in FOLK』というアエラの増刊号を読んだ。60年代から70年代にかけての、様々なフォークムーブメントが特集され、現在も活動を続けているアーティストへのインタビューも満載だ。記事はセンチメンタルになることなく“あの時”を語り、“今”を語る。
 ここに載っている人たちが、暗中模索と実験の中で作り上げてきた日本の音楽の道を、僕は楽ちんに歩み始めていたんだということを強く感じる。さらにそんな自分が、後続のアーティストに何かバトンタッチできるものを作り上げることができたんだろうかと考える。
 表紙に、こんなコピーが載っている。
「あれは、ロックな春だった!」
 ロックな春が終わり、今は、どんな季節を迎えているんだろう。ごちゃまぜの音楽シーンの中で、歌は本当に輝くことができているんだろうか。本当に人の心に届いているんだろうか。
 そう思いながらも、今日もやっぱりギターを抱えている。信じなければ歌は生まれない。

4/4
love,
卓治


dear #52
 出かける時は、iPodに音楽を入れていく。その時の気分で、いろんなアルバムを入れていくんだが、Mr. Childrenの《I Love U》だけは、ずっと入れっぱなしだ。何度聴いてもすごい。
 職業病で、ついディテールまで分析してしまう。メロディ、歌詞、アレンジ、コード進行など。そのどれもが圧倒的だ。
 CMでの15秒で耳に残る歌を作ることが、どれほど難しいことか、よく知っているつもりだ。サビは素晴らしくポップだ。だがAメロに出てくる歌詞は、驚くほど斬新な言葉ばかり。
 以前読んだ『佐野元春語録』に、こんな一節があった。
「日本語によるロックソングの中で一番開拓されていない分野っていうのは、やっぱりアイロニーの表現かな」
 ここにはそれが、たっぷりとある。
 以前、櫻井氏がソロで、カバーだけのライヴをやった時、〈最終電車〉を歌ってくれたという話を聞いた。
 ミスチルがレコーディングしている時、《ひまわり》のジャケットをスタジオに飾っていたという話も聞いた。
 共通点はないように思うだろうが、僕は多くの共鳴を、大きなリスペクトと共に感じている。

4/19
love,
卓治


dear #53
 3/18の熊本でのライヴを、《Bootleg! Live at Kumamoto》という形にまとめた。熊本だけで実現したCOCK'SとSMILEYとのご機嫌なライヴだ。歌いながら僕は、The ConxやDADと一緒にプレイしていた頃の、熱い空気を思い出していた。
 最近、このメールニュース購読希望のメールがよく届く。そこには、「ライヴを見たことがないので、いつか行ってみたい」「昔はよくライヴに行ってた。また見に行きたい」というメッセージがたまに添えられてある。
 そろそろ次のツアースケジュールを届けることができそうだ。楽しみにしていてほしい。
 僕のライヴを見たことのない人に、ぜひライヴを体験してほしいと思う。
 そして昔よくライヴに足を運んでくれた人も、また会場に遊びに来てほしい。そこには何も変わっていない僕がいる。そして、あの頃の君がいるはずだ。
 年齢なんて関係ない。音楽が好きなら、音楽が好きだったのなら、君の中の音楽が今も君の胸をこがしているのなら、音楽は決して裏切らない。

5/8
love,
卓治


dear #54
 東京と大阪と名古屋のライヴが決定した。
 大阪と名古屋は、ツアー〈eyes〉のステージと、〈Naked“eyes”〉というオールアンプラグドのステージで、2日間ずつライヴをやることになった。同じ会場で、まったく違うセットリストと、まったく違う空気感のライヴをやろうと思っている。
 セットリストを練り始めているところだが、歌いたい歌がたくさんあって困っているくらいだ。新曲、アルバムアレンジと変えたプレイ、僕のフェバリットソングのカバー、ゲストとのセッションなど、たくさんのサプライズを準備している。ギターも、レコーディングでしか使わないマーチンやギブソンも持っていく。
 音楽が本来持っていた、そしていつの間にか感じなくなってしまった魔法の瞬間というものがある。それは歌が何かを震わせた時、僕と君との間で交感されるものだ。ライヴの時、僕はただ歌うだけじゃなく、いつもそれを感じようとしている。そして一瞬、それに触れることができる。その魂の一滴のようなものが、そのライヴをかけがえのないものにし、次の新しい歌へのインスピレーションを与えてくれる。だから僕は、ライヴを心から愛している。

6/12
love,
卓治


dear #55
 何かと忙しい日々が続き、dearで便りを送るのが少し空いてしまった。
 先週末から始まったライヴは、今月いっぱい続く。ひさしぶりの街で新しい歌を歌うのが、待ち遠しくてたまらない。
 原宿 Blue Jay Wayでは、2曲の新曲を歌った。
 ある養護学校の保護者のみなさんが、子供たちに色々な体験をさせたいと立ち上げた“ひだまりの会”というものがあり、その代表の人に頼まれて作った〈ひだまりの歌〉は、子供たちや彼らを愛する人たちがみんなで歌えるようにと、すごくシンプルに作った。僕の歌というより、これは彼らの歌だ。
 もう1曲の〈天国のドアノブ〉という歌は、僕にとってとてもパーソナルな内容だから、お客さんがどう受け止めてくれるのか予想がつかなかった。だが、すごく深く受け止めてくれたメールを何通ももらった。
 歌は、できあがった瞬間が完成じゃない。ライヴで歌って、空気に触れて、お客さんの心に届いて、そこで初めて生まれるものだ。そして、歌詞が変わったり、歌い方が変わったり、思い入れが変わったりしながら、レコーディングという作業で最終形になる。
 そしてさらに、歌は変化を続ける。たくさんの人の想いを吸収し、僕1人のものではなくなっていく。

7/5
love,
卓治


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