2006年7月〜12月

dear #56
 恵比寿 天窓 switchは、すごい濃い夜になった。ステージに立った3人の男の、見た目も濃かったんだけどね。ファンの人に言わせると、ちょい不良オヤジの勢揃いって感じだったとか。
 まずは3人で登場して、それぞれの歌を3人でプレイ。〈ジオラマ〉〈I Will Know〉〈Sad Song〉。それから狩野君のソロ、狩野君と研さんで1曲、研さんのソロ、そこへ僕が登場して研さんの歌を1曲という風に、リレー方式でステージを進めた。そしてソロで6曲、〈FILM GIRL〉〈天国のドアノブ(新曲)〉〈ユリエ〉〈青空とダイヤモンド〉〈PARADISE ALLEY〉〈Aspirin〉を歌った。
 アンコールでは研さんバンドのベース、榎本高君も登場して〈種の歌〉を歌った。予定外だったアンコールは、やっぱり〈翼の折れたエンジェル〉。
 高橋研さんと出会ったのは、10年以上前だ。彼が描く切ない歌世界や、一緒に共作して感じた絶妙のバランス感覚に、僕は大きなリスペクトを感じている。打ち上げでは、ただの酔っぱらいのおっちゃんなんだけどね。
 研さんとひさしぶりに旅に出る。名古屋での2日間は、恵比寿に勝る濃いステージになるだろう。
 あ、そうそう、研さんにぜひ“あんかけスパ”を食べてもらわなくちゃ。

7/25
love,
卓治


dear #57
 6月末から7月の間に7本のライヴをやって、今はちょっと一段落しているところだ。もちろん次のライヴのスケジュールを着々と調整している。
 名古屋で、ファンの人が、森絵都の『カラフル』という本をプレゼントしてくれた。児童文学のカテゴリーに入る本らしい。すごく感動した。
 僕は一度好きになると、その作家の本をとことん読み続ける癖がある。少し前は、梨木香歩の本をずっと読んでいた。
 森絵都は直木賞を受賞して、今は書店に行くとたくさんの本が平積みされている。これまでに僕が読んだ本は、中学生が主人公の物語が多かった。もっと早くこの作家と出会いたかったと思った。中学生か高校生の頃に。
 恵比寿と名古屋でステージを共にした高橋研さんは、ティーンエイジャーの悩みや恋や決意を、すごくシンプルに表現する歌を多く作る人だ。
 森絵都も研さんも、表現は古いが、胸がキュンとなる。
 忘れないでいたいと思う。あの頃の愚かで一生懸命だった一瞬の日々のこと。そして、それを越えて見つけた今を、大切にしようと思う。

8/15
love,
卓治


dear #58
 前に少し書いたが、新曲〈ひだまりの歌〉についての話を。
 重度の肢体不自由と知的傷がいを持つ子供たちが通う養護学校の保護者のみなさんが、「家にこもりがちになってしまう子供たちに、色々な体験を通して、人との関わりを持ち、充実した時間を過ごさせたい」と生まれたのが“ひだまりの会”。
 そこでやっている音楽療法をビデオで見る機会があった。1人の子供に1人のヘルパーがつき、歌を歌ったり、楽器を鳴らしたり、体を動かしたりする。
 “ひだまりの会”の代表の人に、歌を作ってくれないかと頼まれた。
 子供たちの心に静かに届くように、そして子供たちを愛する人たちがみんなで歌えるように、優しいメロディとシンプルな言葉で歌を作った。
 後日、音楽療法の時間に、子供たちに〈ひだまりの歌〉を聴かせている様子をビデオで見せてもらった。子供たちの傷がいも様々で、気持ちを表すことができない子もいる。そんな1人1人の子供たちの表情を見ながら、この歌を好きになってくれればいいなと心底思った。
 そしてまた後日、僕はギターを抱えて養護学校へ行った。初めての体験だ。ビデオで見た子供たちの前で、〈ひだまりの歌〉を歌った。子供たちに歌が伝わっているのか、僕は分かることができなかった。しかし1人のヘルパーの人が、「この子が嬉しそうにしてましたよ」と言ってくれた。
 嬉しかった。

9/14
love,
卓治


dear #59
 しばらくステージから離れていたが、今月末から、またライヴが始まる。町田、京都、吉祥寺、そして仙台と山形。仙台は1992年に行って以来、山形はデビューして初めて行く。どんなライヴになるか、今からワクワクしている。
 それから、もうすぐ発表できるが、とびきりゴージャスなライヴを年末にやることになった。お楽しみに!
 ライヴが始まると、体も心もアウトプットの状態になるから、今はインプットの時期にして、色々なものを吸収している。
 前に書いた、児童文学の梨木香歩、森絵都に続いて、やはり児童文学のカテゴリーに入る、湯本香樹実、佐藤多佳子、ルイス・サッカー、マル・ピートなどを読みまくっている。
 〈ONE (オフィシャルファンコミュニティー)〉の、〈Naked Voice〉という僕のダイアリーに、読んだ本の感想などを書いていて、それを読んだファンの人がメールで教えてくれた作家も何人かいる。とても嬉しい。一方通行じゃないコミュニケーションが生まれている。
 もし、お勧めの作家がいたら、このメールに返信という形で送ってほしい。僕から、本を読んだ感想を返信するからね。

10/4
love,
卓治


dear #60
 前回の〈dear〉への返信で、児童文学の本を教えてくれた人たち、ありがとう。たくさんの作家と出会うことができた。まだ全部読み切れてないけど、本の感想を送るからね。
 さて、次の日曜日は町田でのライヴだ。前のライヴから2ヶ月半開いたから、ステージに立つのが待ち遠しい。ここのところ、セットリストを練っているところだ。
 ミュージシャンを迎えてのライヴだと、ある程度パッケージされたセットリストになるが、1人だと自由だ。その夜の会場の空気を感じる中で、本番中に歌を差し替えることはしばしばある。
 例えば、もう1曲アップテンポで飛ばしたいと思った時、もう1曲ラヴソングを歌いたくなった時、みんなの歌声が聞きたくなった時、マイナーではなくメジャーキーでやりたくなった時など、その場で歌を変える。
 そうやって、緊張と解放を感じながら、客席とひとつになっていく。
 今年いっぱいは、いろんなライヴスタイルで、いろんなアーティストとステージに立つ。すごく楽しみだ。

10/23
love,
卓治


dear #61
 京都へ行ってきた。2000年に僕をイベントに招いてくれた浜田裕介君が、6年の歳月を経て、また一緒にやろうと提案してくれた。
 ライヴの時、彼のステージを客席の後ろから見ていた。切ない声と、必死になって歌を伝えようとする姿を見ていた。
 この6年の間に、彼にはいろんなことがあったらしい。もちろんそんなことは、ステージに上がってしまえば関係ない。目の前にいるお客さんに、何かを伝えることができるか、それがすべてだ。
 だけど僕は、逆境を乗り越えて生み出した彼の新しい歌を、とても素敵だと思った。
 見に来てくれた彼のお客さんも、みんな暖かいまなざしだったし、彼を支えるスタッフや友人も、いいやつばかりだった。
 そんなステージに呼んでくれたことを、とても感謝している。
 浜田君に次に会えるのがいつになるか、それは分からない。だけど、遠い空の下で、今も喉を振り絞っている男がいることを、忘れないでいようと思う。

11/13
love,
卓治


dear #62
 11月は、3週連続でイベントに出演した。
 京都に続いて、鎌田ひろゆきのイベントに招かれた。鎌田とは一緒に共作したのをきっかけに長いつきあいになっている。互いのアルバムに参加したこともあるし、僕のライヴにゲストで出てもらったことは何度もあるが、彼のイベントに出るのは初めてだった。2人でのセッション、僕のソロステージの後、鎌田バンドと〈夢の島〉〈傷だらけの天使〉を共演した。今までセッションしたどのバンドとも違う、うねりとグルーヴと、危険な香りのするサウンドだった。歌が、まったく違う横顔をのぞかせてくれた。
 翌週は、年に1度は決まって顔を合わせる男たち、田中一郎さん、高橋研さん、井口一彦君とのライヴ。オープニングから4人で登場して、それぞれの歌を1曲ずつ、ソロステージの後、また4人で並んで4曲。〈種の歌〉と〈君が本当に欲しいもの〉をセッションした。
 この男たちとのセッションは、すごく刺激的だ。音や声で、攻めたり守ったり、押したり引いたりしながら、緊張と解放を感じ、おまけに大爆笑もある。プレイしながら、お互いの歌の奥底に流れている想いや魂を感じることができる。
 打ち上げの席では、「この4人でバンドやろうぜ」とか「4人で歌を作ろう」など、いろんなアイデアが飛び出してきた。
 さあ、来週は東北でのライヴ。仙台は92年以来、山形は初めて。すごく楽しみだ!

12/4
love,
卓治


dear #63
 仙台と山形へ行ってきた。近藤智洋君と鎌田ひろゆきと3人旅だ。
 14年ぶりの仙台には、少ないけれど熱狂的なお客さんが集まってくれた。イントロを始めただけで、歓声や拍手が起こり、歌声が響いた。小さな会場だから、お客さんの気持ちが手に取るように伝わってくる。幸せだった。
 打ち上げは、もちろん牛タン。
 デビューして初めて降り立った山形にも、待ってくれていた人がいた。僕はまるで新人に戻ったような気持ちでステージに立った。最後に3人でアンコールに応えた後、予期しないアンコールが起こり、〈Show Time〉を歌った。
 会場でやった打ち上げで出てきた納豆汁は、感動もののうまさだった。
 待っていてくれる人がいる限り、歌を届けにいかなきゃ。そう心底思った2日間だった。
 この〈Sing To Winter〉をシリーズにして、もっとたくさんの街へ行こうと3人で話した。来年は、さらに初めての街へ行きたいと思っている。
 そして、今年の最後をしめくくるライヴが近づいてきた。ひさびさのバンドライヴに向けて、気持ちと体を作っているところだ。きっと最高の夜になるだろう。ぜひ足を運んでほしい。
 あ、もちろんその翌日のSMILEYとの恒例ライヴもね。

12/20
love,
卓治


小山卓治 News!!! 配信中!

  「小山卓治 News!!!」は、小山卓治の最新情報やウラ情報など満載のメールニュースです。卓治からのコメント(「dear」というタイトルで随時配信されています)や、ライヴ終了後にはセットリストや出演ゲストからのコメントなど、「小山卓治 News!!!」でしか見ることができない情報を配信しています。
 もちろん登録は無料! メールアドレスをお持ちであれば、どなたでもお申し込みができます。携帯電話での受信も可能です。
 受信文字制限のある携帯電話では、情報を全て受信できない場合がございます。あらかじめご了承下さい。
 登録は、以下のアドレスへ「小山卓治 News配信希望」とお書きの上、送信してください

takuji@ribb-on.com


CLOSE


(c)2006 Takuji Oyama