2007年1月〜6月

dear #64
 明けましておめでとう。どんな新年を迎えたのかな。そしてどんな1年にしようと思い描いているのかな。
 25歳でデビューした僕は、今年50歳を迎える。
 「若いうちが花だよ」と、誰かが言った。
 「男は40からだよ」と、誰かが言った。
 「男は50からがおもしろい」と、誰かが言った。
 僕は最後の言葉を、今はすごく身近に感じている。そう、男は、そして女も、歳を重ねるって素敵なことだ。
 焦燥も諦観もなく、雑音も気にならず、余分な空回りも遠回りもなく、おぼろげな姿だった夢ははっきりとピントを結び、ただまっすぐに自分の目指すものへ向かっていく。
 もちろん以前に比べれば、肩に背負っている荷物は増えた。守らなきゃいけないものがある。腰の動きも軽やかとはいえない。でも、それがどうしたっていうんだ。
 誰でもない僕の人生を僕は送ってきた。それをこれからも続けるだけだ。
 君にもそうあってほしいと思っている。

1/9
love,
卓治


dear #65
 先日、スタッフとミーティングをした。来年3月21日に迎える25周年を見すえ、どう動き、何をしていくかを話し合った。たくさんのアイデアが出て、いくつもの計画を立てた。今年はいそがしくなりそうだ。
 まずは、3月11日のライヴから始める。タイトルは〈eyes“1 to 3”〉。《NG!》から《Passing》までの全29曲を歌いきる。多分3時間くらいかかるだろう。4回シリーズのこのライヴを、ぜひ見届けてほしい。
 このシリーズを軸にして、たくさんのライヴをやろうと思っている。懐かしい街や、初めての街へ向かうつもりだ。
 リリースも考えている。これから具体的に動いていく。そして、今までにやったことのないテーマにもチャレンジしていこうと考えている。

 オフィシャルファンコミュニティー〈ONE〉は、2周年を迎えた。コミュニケーションの広場として生まれたONEは、僕にとって新しい表現の場にもなっている。ポエトリーリーディング、音楽と映像の融合、ライヴ音声や映像の配信、書き下ろしの小説、ネット中継など、既存の枠に収まらないあらゆる方法で表現している。インターネットは、僕にとって強力な武器になった。
 今は、大きな動きを始める前のインプットの時期だ。音楽を聴き、本を読み、人と会い、ギターからこぼれるメロディを捕らえ、浮かんだ言葉をノートに書き記している。
 それを形にし、アウトプットする時が、もうすぐやって来る。

1/24
love,
卓治


dear #66
 四人の男のライヴが近づいてきた。これまでの四人でのイベントは、各ソロのコーナーがあってセッションがあったが、今回は最初から最後まで四人が出ずっぱりで、ボーカルを交代しながら、楽器を持ち替えながら、すべての曲を四人でプレイする。気分はちょっとCSN&Y。独特のグルーブ、熱いプレイとコーラス、そしてもちろん爆笑も。

 一郎さんと最初に会ったのは、僕がデビューしてすぐの頃に出演したイベントでARBと一緒になって、楽屋に挨拶に行った時だ。それからずいぶんたって、アコースティックのイベントで共演する機会が増えて、お互いのライヴにゲスト出演したりするようになった。
 研さんは、もちろん曲は知っていたが、一緒にライヴをやったのは93年の神戸 Chicken Georgeでのイベントだった。その打ち上げでビールを飲みながら話し込み、その後、共作するまでになった。
 井口君は、彼がデビューした頃からの付き合いだ。ラジオでおしゃべりしたり互いのライヴに遊びに行ったりして、つかず離れずで音楽を奏でてきた。
 それぞれに、それぞれの出会いがあって、お互いの音楽へのリスペクトがあり、年齢を越えた友情もある。だからといってベタベタとつるむのではなく、緊張と距離感を保って、たまに会っては音楽を通じて会話する、そんな関係が四人にはある。
 今回のイベントは、これまでになくお互いの音楽に深く踏み込むライヴになるだろう。また何か、新しいものが見えてくるかもしれない。楽しみだ。

2/9
love,
卓治


dear #67
 近所を歩いていると、あちらこちらで花が咲き始めている。いつも歩く道に、可憐な紅梅が咲いていた。
 部屋に戻り、ギターを抱え、3月11日のセットリスト作りに取りかかる。アルバム3枚、全29曲を歌いきるライヴだから、いつもとは違う並びになりそうだ。
 アルバムを3枚リリースした頃から、ようやくセットリストに幅が出始めたが、今でもセットリストを決めるのにはすごく時間がかかる。ある曲から次の曲へつないだ時、思わぬ効果が生まれたり、曲が違う色合いを見せたりすることがある。だからライヴ前に、必ずセットリストの順番で全部歌ってみる。その上で、また練り直す。何度も、何度も。
 〈eyes 1 to 3〉のシリーズは、名古屋と大阪でもやろうと思っている。もうすぐスケジュールが決まるから、楽しみにしていてほしい。
 15曲ほど歌って、小休止。コーヒーを煎れ、窓を開ける。
 窓際に置いてあるブルーデイジーが、今にも咲きそうだ。

3/2
love,
卓治


dear #68
 先日の〈eyes 1 to 3〉は、最高のライヴになった。僕が25歳から27歳の間に産み落とした全29曲を、3時間かけて歌った。空気がツンと澄み切ったり、お客さんの歌声が会場に響き渡ったりした。
 「歌が、少しも古びていなかった」という感想をいくつももらった。僕にとって最高のほめ言葉だ。

 来週の吉祥寺から、〈SING TO SRING〉シリーズが始まる。昨年、仙台と山形へ一緒に旅をした、鎌田ひろゆきと近藤智洋とのライヴシリーズで、長野、豊橋、松坂まで旅をする。
 前回はアンコールで3人でセッションしたが、メールをやり取りしながら、「本編でも何か一緒にやろうよ」と話しているところだ。
 ソロライヴと違って、こういうイベントでは不思議な開放感がある。ステージ袖や客席の隅で共演者の歌を聴きながら、自分の歌とどう共鳴するのかと考え、ステージに立つ。
 ソロの時とは違う空気感で歌うことができて、歌がいつもと違う熱を発する。何か新しい発見をする。自分の持ち時間が短くても、僕はこんなイベントがとても好きだ。

3/16
love,
卓治


dear #69
 今月はイベントへの出演が続く。それぞれのステージで、近藤智洋、鎌田ひろゆき、鈴木祐樹、さねよしいさ子さんとのセッションがあるから、部屋でギターやピアノを弾きながら予習しているところだ。
 僕が作る曲とは、違うメロディ、コード進行、曲の展開、詞の世界、それらをハートに叩き込んでいる。
 聴くだけじゃなく、一緒にプレイすることで、その人のバックボーンが見えてくる。「こんな音楽を聴いて育ったんだな」、「こんな悩みを乗り越えたんだな」、「こんな風になりたいと思ってるんだな」、そんなことが、くっきりと分かる。
 セッションは、緊張感と充実感に満ちあふれる時間だ。

 今、調整していることがたくさんある。今まで行ったことのない街へのライヴはもちろん、みんなの元へ届ける“もの”を作るための準備を始めている。詳細が決まったら、すぐにこのメールで知らせるから、楽しみにしていてほしい。
 さて、リハーサルと旅の準備に取りかかるとしよう。

4/10
love,
卓治


dear #70
 〈eyes“4 to 6”〉も、前回に続いて最高のライヴになった。28歳から31歳の間に作った32曲を、やはり3時間かけて歌った。普段あまりライヴで取り上げない歌も多かったんだが、客席からの歌声は途切れることはなかった。
 〈eyes“1 to 3”〉とは、明らかにその空気が違っていた。歌の登場人物たちは20代後半を迎え、よりリアルな夢を目指している。タフにもなった。同時に、どうしようもない世の中の仕組みにも気づき始めている。そして「それがどうした」と思っている。

 名古屋と大阪でのライヴが決まった。ここでは、〈eyes“1 to 3”〉のメニューでやろうと思っている。東京とはセットリストを変更するつもりだ。ぜひ見届けてほしい。
 それから、初めて行く街、すごくひさしぶりの街へも行くことになった。まもなく発表できるだろう。

 5月いっぱい、僕は音楽とまったく関係ないプロジェクトに取り組む。大きな仕事だ。そのために髪を黒く染め直した。
 極秘で進められているプロジェクトだから、具体的な内容はまだ言えないが、来年くらいには発表されると思う。これも楽しみにしていてほしい。

5/7
love,
卓治


dear #71
 今週末、山梨県の都留市でライヴをやる。山梨に行くのはデビューして初めてだ。来月、これもまた初めての宮崎県へ行くことになった。両方とも、地元の人たちがセッティングして僕を呼んでくれる。本当に嬉しい。
 こうして一歩ずつ踏み固めていくようにライヴをやることが、今はとても大切だと感じている。
 アルバムをリリースすることが最初のテーマだが、実際にライヴのためにいろんな街へ行くことで、歌が1人1人の心に本当に届いているということをリアルに感じることができる。
 歌の旅は終わらない。

 5月中は、音楽とはまったく関係ない大きなプロジェクトに参加していたが、それも無事に終わった。しばらくギターにも触っていなかった。今は、無性に歌いたい気持ちだ。早くステージに戻って、みんなの顔が見たい。
 音楽があるからこそ、僕はここに、こうして立っていられる。

6/4
love,
卓治


dear #72
 山梨県都留市でのライヴは、地元の人たちが手作りで開催してくれたライヴだった。僕の歌を初めて聴く人たちもたくさんいて、終わった後は、ビールを飲みながらお客さんと談笑した。とても温かい夜になった。
 次は大分と宮崎へ行く。すごく楽しみだ。

 ライヴの後、僕はスタジオに入った。今は手に入らない初期のアルバムを再発売するため、24bitデジタルリマスタリングの作業をした。
 まずは《NG!》と《ひまわり》。《NG!》には、デビューシングルバージョンの〈FILM GIRL〉と〈西からの便り〉を、《ひまわり》には、シングル〈傷だらけの天使〉のB面に収録した〈悪夢〉を、それぞれボーナストラックとして収録する。

 83年から84年のサウンドが、2007年のサウンドに生まれ変わった。2001年にリリースしたベストアルバム《stories》の時にやったリマスタリングより、さらにすばらしいサウンドだ。
 アナログの音を継承し、クリアで、ふくよかで、奥行きのあるサウンドになった。現段階での最高の音質だ。
 この新しい息吹を得た懐かしいアルバムが、みんなの元へ届く日が、今から待ち遠しい。

6/19
love,
卓治


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