dear #90
去年に続き、今年も北海道でのライヴが実現した。札幌でのソロライヴは、何と20年ぶりだった。お客さんからリクエストを募ったりして、たっぷりと歌うことができた。
北海道に行くと、毎回不思議でおいしい食べ物に出会う。去年行った時に初体験したのは、ジャガバターに塩辛を乗っけた“ジャガ辛”。素材がいいからなんだろうな、すごい美味だった。
今回、コンビニで“ほっけのおにぎり”を発見。「ほっけ〜?」と半信半疑で食べたら、意外においしかった。
オフィシャルファンコミュニティーONEの〈突撃インタビュー〉(ファンの人と直接会ってインタビューを受ける企画)で、札幌市内から車で30分ほどのところにあるモエレ沼公園へ行った。僕の大好きな彫刻家、イサムノグチが設計した公園だ。
モエレ山に登り、ガラスのピラミッドで、ファンの人たちとおしゃべりした。
とても1日じゃ回りきれないくらい広大な公園だから、ぜひまた行ってみたいと思っている。
7/6のライヴを終えて、7/26名古屋クアトロのライヴに向けてAloma Black'sとリハーサルを重ねている。名古屋でのバンドライヴは、何と95年にBACCHUSと行って以来だ。
95年のライヴの時に、お客さんにメッセージを配布した。その中にこんな一節がある。
「俺はいつもこう考えている。CDは俺から君への手紙。ライヴは君とのデート。俺から一方的に手紙を書くだけじゃつまらない。君がそれをどう感じてくれたかを知りたい。だから君に会いに来た。君の顔が輝いてくれたら、俺の気持ちが伝わったんだと思うことができる」
あれから12年以上たったけど、僕の気持ちは何も変わっていない。あいかわらず、君の笑顔に会いたくて、旅を続けている。
7/23
love,
卓治
dear #91
信じられないオファーが事務所に来たのは、去年の3月始めだった。
「ゲーム? 出演? どういうこと? っていうか、何で俺?」
くわしく聞くと、主要登場人物5人の中の1人、大沢賢治というキャラクターが僕にぴったりだということで、白羽の矢が立ったということ。マネージャーに「どうします?」と聞かれて即答した。
「やるとも! だっておもしろそうじゃん!」
プロジェクトは一気にスタートした。スタッフとの顔合わせ、衣装合わせ、分厚い台本が届き、極秘プロジェクトということで秘密を漏らさないという覚え書きを書いた。監督さんとの本読み、そして3月末から撮影に入った。
もちろん演技なんてやったこともない。セリフを覚えるのも一苦労だった。
現場は完全に映画制作のスタイルで、僕以外の出演者は、ほぼプロの役者さん。現場にも慣れてる。僕は監督さんの指示を聞き、必死になって大沢賢治を体にたたき込んだ。
やがて僕が演じる大沢賢治が1人歩きを始め、撮影は進んでいった。
大勢の役者さんとの共演、都内だけじゃなくいろいろな場所でのロケ、話したいことは山ほどあるんだけど、発売されるのが年末ということで、今の段階で公表できないことの方が多い。
でも、いずれ何かの形でくわしく話そうと思っているし、この〈dear〉にも書こうと思っている。
ところで、みんなゲームってやるのかな?
僕は全然やったことがない。完成した〈428〉をプレイして、ラストシーンまでたどり着けるのかな。
このラストシーンがすごいんだよ。だって大沢賢治が……言えないんだよなあ。
8/8
love,
卓治
dear #92
2日前、ファンの人たちと、友人のSMILEYと鎌田ひろゆきを招いて、バースデイパーティーを開いた。とても温かくて笑顔にあふれた時を過ごした。
そして今日、僕は51歳になった。デビューして、人生の半分以上を過ごしてきたことになる。
25歳でデビューした時、50歳を越えて歌い続けているなんて予想もしていなかった。と言うより、考えたこともなかった。
みんなもきっと同じだと思うが、いくつか大きなターニングポイントがあった。
「もし、あの場面で、違う道を選んだら」
僕は《Circle Game》というアルバムは作っていなかっただろう。歌もやめちゃってるかもしれない。今よりずっと楽ちんな毎日を過ごしてるかも。リッチな暮らしをしてるかな。
でも、どんな想像の中の自分より、僕は今の自分が一番好きだ。
そして、みんなもきっと同じだと思うが、未来へのビジョンがある。
「こんな自分でありたい。やりたいことは山のようにある」
そのために、今やるべきことが見えてくる。やってはいけないことが分かってくる。手に入れなきゃいけないものがある。捨てなきゃいけないものがある。
ある時から、人生はとてもシンプルになってきた。自我に目覚めた時に感じた360度のパノラマの人生が、ほんの数10度にしぼられたからだ。
銀行の頭取にはなれない。政治家にはならない。建築家は無理だろう。友禅の職人を目指すには時間が足りない。プロレスラーになるには非力すぎる。
ただひとつ。
僕には音楽がある。
9/16
love,
卓治
dear #93
大阪のライヴまであと2週間ほど。大阪でバンドライヴをやるのは、95年以来だから、13年ぶりになる。一緒にプレイするのは、26歳のバンドマンで編成したパーソナルバンド、Aloma Black'sだ。
今までたくさんのバンドを作ってライヴをやってきた。そのほとんどが同年代のミュージシャンだった。これほど年齢の離れた連中と一緒に音楽をやるのは初めてのことだ。
僕がデビューして以降にヒットした音楽を聴いて育った、若い世代がデビューし、さらに、その歌を聴いて育った次の世代がデビューする時代になっている。
その表現方法やサウンドは新しいアプローチだが、ベーシックにある歌への想いは変わらないように感じる。
Aloma Black'sとプレイしていると、ほぼ4半世紀の年齢差を軽々と越えることができる。彼らが生まれて間もない頃に僕が作った歌を一緒にプレイする時、同じ熱を共有することができる。それが音楽のすばらしいところだ。
大阪のライヴが今から待ち遠しい。熱気にあふれたバンドライヴになるだろう。ドラムのJACK、ベースのYAMATO、ギターのMercyを紹介できるのが、すごく楽しみだ。
これから年末に向けて、たくさんのライヴを予定している。九州から北海道まで、バンドライヴもあれば、アコースティックライヴもあり、完全生声でのライヴもある。
夏場はあまりライヴをやらなかったから、気持ちがうずうずしている。
早くみんなに会いたいよ。
10/1
love,
卓治
dear #94
しばらく秋晴れが続いてたんだが、今日はシトシトと雨。ひさしぶりの雨も気持ちがよくて、ベランダで煙草を一服。
でもギターを置いてある部屋は、なるべく湿度が高くならないようにしている。今は12弦ギターがあるから、特に気をつけている。
最近あまり12弦ギターをステージで使っていなかったから、11/1の生声、生音ライヴ〈Naked“eyes”〉のために部屋に持って帰ってきて、鳴りを確かめているところだ。
生で歌うライヴは、通常のPAを使ったライヴとはまったく空気が違う。PAを使うと、声や音はスピーカーから聞こえるが、生だと、ギターのボディから、僕の体から響く。それを、僕を囲むように座るお客さんが、生のままで受け止める。小さな音は小さく、大きな音は大きく。
裸の歌が、そこにある。
2006年にやった〈Naked“eyes”〉では、シンガーにゲスト出演してもらった。今回は楽器の人に登場してもらうことにした。バンドネオンの小川紀美代さん、バイオリンの中井いち朗君、パーカッションの丹菊正和君。
それぞれの楽器と、どの曲でどんな風にセッションするか、考えるのはすごく楽しかった。楽器の音色には、持って生まれた物語がある。
「この曲にこの音をぶつけたら、歌がまったく違う表情を見せるかもしれない。言葉がまったく違う世界を語り始めるかもしれない」
そんなことを思いながら曲をセレクトした。
その場に居合わせなければ決して感じることができない、本当の歌を、ぜひ体感して欲しい。
10/24
love,
卓治
dear #95
11/1に横浜でやった〈Naked“eyes”〉は、一瞬一瞬がしびれるほど研ぎ澄まされたライヴになった。
生のアコースティックギターと生の声が会場に響き、ゲストの奏でるバイオリン、バンドネオン、パーカッションの音色が、空気を濃く彩っていった。
そしてライヴの後半では、来てくれたお客さんたちの歌声が、会場に美しくこだました。
本当にすばらしいライヴになった。
この夜は、ライヴレコーディングをしていた。
通常のライヴなら、PAからの音を録音するんだが、今回は会場の何カ所かにマイクをセッティングして、その夜に生まれた空気そのものを録音した。
先日、そのラフミックスを聴いたんだが、かなりいい音で録れていた。今週から本格的にミックスが始まる。今までにないライヴアルバムになるだろう。
同時進行で、映像の編集にも取りかかる。ぜひ完成を楽しみにしていてほしい。
そして今年は、まだまだライヴが続く。東京、福岡、熊本、大分、札幌。アコースティックだったりバンドだったり、スタイルは様々だが、たくさんの街に歌を届けに行こうと思う。
ゲーム〈428 封鎖された渋谷で〉の発売日、12/4が近づいてきた。テレビCMもそろそろスタートするらしい。
僕の歌を聴いてくれている人でゲーマーっていうのは、ほとんどいないようだ。僕もゲームはやらないから、まずはWiiを買わなきゃなって思っているところ。
撮影に入る前にもらった全出演者の台本を読むと、物語はすごくスピード感があって、極上のサスペンスになっている。
僕なんかの世代だと、ゲームというと暇つぶしや一部のマニアのためのものってイメージがあるんだが、今はひとつの表現方法、エンターテイメントとして成立しているようにも感じる。
僕が小説や映画や音楽に触れて、感じ取って、受け止めてきた大切なもの、それを新しい世代はゲームからも感じることができるのかな。
うーん、自信ないけど。
まあとにかく、機会があったら、ぜひゲームをやってみてほしい。ゲームが苦手でも、ワンシーンワンシーンに僕が出てくるから、それだけでも楽しめると思うよ。
11/17
love,
卓治
dear #96
ここのところ、このメールニュースを希望する人が増えている。ようこそ。
今まで読んでくれてる人にはくり返しになるけど、この〈dear〉は、僕の日々の気持ちやできごとを綴って、不定期だけど送り続けている。バックナンバーはオフィシャルサイトに掲載してるから、のぞいてみてね。
今年1年は、本当に充実していた。
去年から続けてきた、初期のアルバムをリマスタリングして再発売するプロジェクトが3月に完成。デビューアルバム《NG!》から《On The Move -Complete-》まで8セットをリリースした。
3月にデビュー25周年を迎え、友人たちを招いて〈Party! 25th anniversary Live〉をやった。
6月には通算11枚目になるアルバム《Circle Game》をリリース。
これまでずっと続けてきた、アコースティックギターとピアノでのライヴに加え、Aloma Black'sというパーソナルなバンドでライヴを展開した。
7月に〈Party! 25th anniversary Live〉をDVD+CDでリリース。
11月には生声生音のライヴ〈Naked“eyes”〉を、ライヴレコーディングしながらやり、そのミックスがちょうど終わったところだ。CD2枚組にボーナスDVDという形でリリースする。近々告知ができると思う。
12月に、ゲーム〈428 封鎖された渋谷で〉が発売された。僕は主要登場人物の1人、大沢賢治として出演している。
オフィシャルファンコミュニティー〈ONE〉は、12月で4周年を迎えた。ここでしかできない新しい方法で、ファンの人たちとつながっている。
この1年間のライヴ本数は31本。ちょうど去年と一緒だ。数年前に比べれば増えたけど、まだまだ行きたい街はたくさんある。来年は、さらに大きく動くつもりだ。
この〈dear〉を書くのは、今年はこれで最後になると思う。来年も、ここで様々な思いを綴っていきたい。これからもよろしくね。
メリークリスマス! そして素敵な新年を!
12/24
love,
卓治
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