2010年1月〜6月

dear #111
 2010年が始動。みんなどんな新年を迎えたかな。僕はゆったりとお正月を過ごした。

 去年は本当に充実した1年だった。年間のライヴ本数が39本。今までで一番多い。その1本1本が充実して、記憶に残るライヴが多かった。でも、まだまだ足りないけどね。
 
 素敵なことがあった。
 引きこもりで家から出ることができず、ゲームばかりやってる青年がいた。僕が出演した〈428 封鎖された渋谷で〉をやり、そこに登場する大沢賢治が実はシンガーだと知り、さらに彼の地元でライヴをやることを知って、ひさしぶりに家を出てライヴを楽しんでくれた。
 ライヴの後、青年と握手を交わし、一緒に写真を撮った。
 僕のライヴがひとつのきっかけになったことが、本当に嬉しかった。今、どうしてるかな。

 《iNG! RED盤》《iNG! BLACK盤》のリリースまでもうすぐ。アコースティックギターとピアノだけでやったライヴテイクを厳選して、38曲+DVDのみ収録2曲の全40曲を、じっくり時間をかけてミックスした。
 スタジオは、96Khz、24bitの、世界最高水準のレコーディングができるスタジオを使用した。
 今回は新しいチャレンジをした。デジタルで作り込んだ音を、アナログのテープにダビングし、さらにそれをパソコンに戻すという作業。アナログテープを通すことで、デジタル臭さがいっさいなくなって、まるで目の前で歌ってるようなリアル感が生まれた。奥行きがあって、輪郭のある音が迫ってくる。
 再発アルバムの時に初めて使った世界最古のアナログイコライザーITIも、もちろん使った。
 ライヴテイクなんだけど、ライヴアルバムとしての位置づけじゃなく、僕のアコースティックのアーカイブとして聴いてもらえると嬉しい。
 4枚のCDは、アルバムのリリース順、アルバムの収録順に並べた。〈1 WEST 72 STREET NYNY 10023〉から〈天国のドアノブ〉まで、“はじまりから、かわらない”歌を聴いてほしい。

 そして、ライヴも始動だよ。まずは静岡と豊橋の〈唄旅〉からスタート。
 静岡は、サックスのSMILEYが参加する方向で進めている。
 今年もたくさんの街を訪れて、歌を届けようと計画してる。会える日を楽しみにしてるよ。

1/5
love,
卓治


dear #112
 札幌でのライヴを終えて帰ってきた。マイナス12度の暴風雪、真横から飛んでくる吹雪、ホワイトアウトする風景を、初めて体感した。

 楽天舎で歌うのは去年に続き2度目になる。コンパクトなスペースだけど、すごく気持ちのいい空間のライヴハウスだ。お客さんと膝をつき合わせるくらいの近さで歌う。歌がみんなの心の奥に届くのが見えるような気がする。
 全20曲、熱い夜になった。
 終演後は、そのまま客席でお客さんと車座になって打ち上げをやる。去年初めて飲んですっかりファンになった、札幌でしか飲めないサッポロクラシックビールや、おいしい地酒を飲みながら、みんなとおしゃべりする。最高に楽しい夜だった。

 翌日、初めての雪まつりへ出かけた。写真を撮ったり、買い食いしたり、バンドの演奏を聴いたり、スノーボードの大会を見たり。
 そこから足をのばして大倉山ジャンプ場へ行った。リフトに乗って一番上まで。めまいがする高さ! ここから滑り降りて飛ぶなんて絶対無理!
 ジャンプ台の先端は、ほんの少し下に傾斜してる。つまり飛ぶというより、どれだけ遠くに落ちるかという競技なわけだ。でもテレビで見る限り、その姿は美しく、まさに飛翔しているように感じる。
 そこに立ったことで、週末から始まる冬期オリンピックを、さらに楽しく見れそうだ。

 夜は時計台ホールでのライヴ。入場無料だったから、たくさんの人が立ち寄って聴いてくれた。地元の人と観光客と、半々くらいだったかな。
 初めて聴いた僕の歌は、どんな風に響いたんだろう。あの場が、出会いの場になってくれたらいいな。

 今年は、もう一度北海道に行くつもりだ。道東と札幌を回るツアーを計画してる。
 たくさんの新しい出会いのために、旅は続く。

2/12
love,
卓治


dear #113
 今夜は満月。夜桜見物としゃれ込もうと思ってたんだけど、東京の桜はまだまだつぼみ。来週くらいかな。

 今年のライヴの予定は、もうすでに夏くらいまで決まってきてる。初めての街や、懐かしい街へ、たくさん出かける予定だ。
 去年は39本のライヴをやった。今年はそれを軽く越えそうだ。

 4/15に行く三重県の桑名市は、ファンの人からのメールがきっかけだった。「僕の街で卓治を聴きたい」。そのひと言でライヴが実現することになった。最初、三重県ということで「遠いな」ってイメージだったけど、桑名市は名古屋市から30分くらいで行けるんだと知った。
 初めての街って、行ってみないと分からないことが多い。以前、長野に住んでる人から「ぜひ長野でライヴを」と言われてて、ようやく長野市でのライヴが実現した後、その人から「僕んち、長野市に行くより東京の方が近いんです」って言われちゃったことがあった。長野県って、でかいんだね。
 去年、岩手県の盛岡に行った時も、「岩手県は、北海道の次に面積が大きい」って聞いて、盛岡だけじゃ、岩手に行ったとは言えないなと思ったっけ。

 4/17 大阪 ANOTHER DREAMは、去年はバンドライヴだったけど、今年はアコースティックのユニットで行く。僕のパーソナルバンドAloma Black'sのギタリスト、Mercyとのステージだ。
 アコースティックならではの、スリリングで自由で、繊細で深いサウンドを聴いてほしい。メロディや言葉を、今一番いい形で届けられるユニットだ。

 4/16大坂、4/18名古屋は、ONEメンバー限定ライヴ。メンバーは無料。メンバーじゃない人も、メンバーの同伴なら入れるよ。
 普段あまり歌わない歌をやったり、まったく違うスタイルやアレンジでやったり、いつもとは違うライヴにするつもりだ。プレゼントも用意しようかなと思ってる。

 話はちょっと変わって。
 デビューからの付き合いのカメラマン、内藤順司という男がいる。リマスターアルバムのジャケット写真は彼の作品だ。DVD《MANY RIVERS TO CROSS》を制作したのも彼だ。
 その内藤が、『もうひとつのスーダン』という写真集を出版した。
 外務省をやめて、単身スーダンに渡り、医療活動を続ける川原医師を追いかけたものだ。ドキュメントタッチなんだけど、透き通るような少女の笑顔、人々の満面の笑み、美しい大地がある。そして、その美しさの向こう側に、きびしい現実が見えてくる。
 少し前に『行列のできる法律相談所』ってテレビ番組で紹介されたから、見た人もいるかも。
 内藤のサイトで写真を見たことはあったが、実際に印刷された写真は、何倍もの説得力を持って迫ってきた。僕は、涙がこぼれた。
 写真が伝えるメッセージは、手に取らなければ伝わらない。でも手に取ったら、内藤の、川原医師のメッセージは、絶対に君に伝わる。

3/29
love,
卓治


dear #114
 初めて訪れた三重県桑名市のフォーラムでのライヴは、すばらしいライヴになった。
 多分、僕の歌を知っていて来てくれた人より、初めての人が多かったように思う。平日ということもあり、どのくらいお客さんが来てくれるか予想もつかなかったが、会場は満席になった。子供連れからマダムまで様々。
 「初めまして」のライヴは、気合いが入る。セットリストは、ベストセレクションになった。初めての人に聴いて欲しい歌を準備した。

 ステージに上がって最初の3曲はアップテンポで飛ばした。歌がちゃんと伝わっているのか、まだつかめなかった。
 おしゃべりをはさみながら、ミディアムテンポやスローテンポの歌を歌っていくうちに、客席の空気がひとつになっていくのを感じた。
 マイクを離し、ギターの音をしぼり、生声で〈種の歌〉を歌っている時、「伝わっている」と、強く感じた。シンガーとして、最高にしびれる瞬間だ。
 後半、またアップテンポで飛ばしていくと、自然と手拍子がわき起こった。みんなの笑顔が見えた。
 幸せだった。
 桑名ライヴを提案してくれた人や、あの夜来てくれた人たちに、心から感謝したい。ありがとう。

 来月は〈唄旅〉というシリーズでのライヴだ。高橋研さんと鎌田ひろゆきと3人で、愛媛の松山、大阪、三重の松阪、名古屋へ行く。松山と松阪はひさしぶりだな。

 今年は、去年よりさらにたくさんのライヴをやろうと計画している。初めての街や懐かしい街を訪れるつもりだ。
 会いに行くよ。

4/26
love,
卓治


dear #115
 〈唄旅〉シリーズで、愛媛の松山、大阪、三重の松阪、名古屋へ行ってきた。今回は、鎌田ひろゆきと高橋研さんとの3人旅だった。
 どの街でも熱い歌声や拍手に迎えられ、たくさんの出会いがあった、幸せな5泊6日のツアーになった。

 旅の途中で聞いた話を、みんなにも聞いてほしい。
 怪我や病気で長期入院している子供たちのために、病院に出向いていって授業をする先生がいる(僕はこのことを知らなかった)。
 この話を聞かせてくれたのは、国語の先生。担当している1人の少年は白血病で、他の病気も併発し、今は意識のない状態。
 先生は少年に、僕の〈種の歌〉を聴かせてあげたそうだ。歌が彼に聞こえているのか、伝わっているのか、それは定かではない。
 でも先生は、そして少年のお母さんは信じている。少年が回復してくれることを。
 少年に、「笑顔を忘れないで」とメッセージを添えてサインを送った。
 お母さんはすごく喜んでくれ、〈種の歌〉を好きになってくれたと聞いた。そして僕に「ありがとう」と伝えてほしいと、先生に頼んだ。

 こちらこそ、ありがとう。すごく嬉しいです。
 僕も少年の回復を心から祈っている。〈種の歌〉が、少年に届けばいいな。

 ツアーは続く。
 来週の日曜は東京で、高橋研さんをゲストに迎えてのライヴ。
 そして来月、金沢、福井、静岡でのライヴがある。
 金沢と福井は、去年の9月に〈唄旅〉シリーズで3人で行った。今回はソロライヴだ。
 金沢でソロライヴをやるのは、1988年以来。福井は初めてだ。
 もしリクエストがあったら、このメールに返信という形で送ってね。
 僕の最高のライヴをやるよ。

5/13
love,
卓治


dear #116
 金沢、福井の北陸ライヴは、大成功だった。
 リクエストを送ってくれた人、ありがとう。全部に応えることはできなかったから、また次に行く時に歌うことにするよ。
 27日は、Aloma Black'sとサックスのSMILEYでのバンドライヴ。新しいレパートリーがどんどん増えている。

 金沢のジェラスガイでのライヴが決まった直後、長い付き合いの白浜久さんからメールをもらった。なんでも、ジェラスガイのオーナー、チャオさんと、店長の中井さんは、白浜さんの兄弟とも言える間柄ということ。
 中井さんとは、ライヴ前にメールのやり取りをして、お客さんからのリクエストを送ってもらったりした。

 初めて訪れたジェラスガイは、どこに座っていてもベストのサウンドが聴けるシステムがあり、音への強いこだわりを感じた。
 22年ぶりのソロライヴだったが、大きな手応えを感じた。来てくれた人、ほんとうにありがとう。
 ライヴの後は、チャオさん、中井さん、そしてお客さんも交えてお店で打ち上げ。

 翌日、車で福井へ移動する途中、ファンの人から「ぜひ行った方がいい」と勧められていた恐竜博物館へ。
 男子って、恐竜とか怪獣が好きなんだよね。僕もノリノリで化石や骨やレプリカの恐竜に見入った。すごい規模だったな。

 福井県武生は、倉が多く残る街。落ち着いた風情で、その日歌うRag Time Classicsも倉を改装したお店だった。
 福井県で初めてのソロライヴは、地元ファンの人がすごくがんばってお客さんを集めてくれたおかげで、満員になった。
 あらかじめ決めていたセットリストは、街や店の雰囲気、来てくれたお客さんの雰囲気を感じて、ずいぶん変わった。
 最高の気分で歌うことができた夜だった。
 この夜も、お客さんを交えての打ち上げ。お客さんが持ってきたギターで〈1 WEST 72 STREET NYNY 10023〉を歌ったりした。東京ではなかなかないことだ。

 金沢と福井、また必ず行くからね。

 さて、今日はバンドのリハーサル。来週のライヴに向けて、最終的な調整に入る。
 バンドライヴは半年ぶりだ。今回は平日のライヴになってしまったけど、ぜひ来てほしいな。
 ライヴのたびに新しい曲に取り組み、新しいアレンジに挑戦している。今だからこそできるライヴを、今やる。それは、今しかできないライヴだ。二度と同じライヴはない。

 6/30、待ってるよ。

6/22
love,
卓治



小山卓治 News!!!  配信中!

「小山卓治 News!!!」は、小山卓治の最新情報満載のメールニュースです。卓治のエッセイ(〈dear〉というタイトルで随時配信されます)や、いち早くライヴチケットの予約開始日をお伝えするなど、「小山卓治 News!!!」でしか見ることができない情報を配信しています
もちろん登録は無料! パソコンでも携帯電話でも、お申し込みができます
受信文字制限のある携帯電話では、情報を全て受信できない場合がございます。あらかじめご了承下さい

登録は以下のアドレスへ「小山卓治 News配信希望」とお書きの上、送信してください

takuji@ribb-on.com


CLOSE


(c)2010 Takuji Oyama