今回は、僕が新たに始めたみっつの新しいチャレンジと、ファンのみんながやってくれている新しいチャレンジについて書こうと思う。
僕のチャレンジは、ライヴ〈Naked“eyes”〉、《Bootleg!》シリーズ、そして養護学校の子供たちのために歌を作ったことだ。
ファンの人たちのチャレンジは、《小山卓治トリビュートアルバム》の制作だ。
今年の2月4日、東京 恵比寿 天窓 switchで〈Naked“eyes”〉というタイトルのライヴをやった。現在続けているツアー〈eyes〉と違い、マイクもPAも使わず、まったくのアンプラグド、生の声と生の楽器、裸の歌でのライヴだ。
2002年の11月、音楽ライターの角野恵津子さんのイベントに誘われ、初めて生の音だけでライヴをやった。その時の感触が体の中に残っていて、いつか自分の企画としてやりたいと思っていた。3年後にそれが実現した。
ツアーで関西などを回った時、アンコールで客席の中でギターを抱えて歌った経験があった。そのイメージもあった。
目の前にマイクがないのがこれほど心細いものかと自分でも驚いた。お客さんに向かって歌を届けていたつもりだったが、実はマイクにすがっていたのではないかと思った。リバーブなどのエフェクトに頼らずに歌を裸にするのは、最初はすごく難しかった。だけど考えるまでもなく、これこそが本来の歌の姿だ。
ステージのスペースにもお客さんを入れて、僕はフロアの中で歌った。お客さんとほぼ同じ目線だ。歌は僕の体から響き、お客さんの体に直接響く。PAを使わないから、小さな音は小さなままだ。お客さんは耳を澄ます。
衣擦れの音さえ邪魔になるほどの空気の中で、しびれるような緊張感と充実感をお客さんと共有した。
〈Naked“eyes”〉は、通常のライヴの枠に捕らわれない自由な発想を取り入れ、カバー曲も歌い、ゲストに登場してもらった。元ピールアウトの近藤智洋君、長いつきあいの鎌田ひろゆき、フロントアクトとして一緒に旅をしたことがある元パウダーの鈴木祐樹。
それぞれの声の特徴や力が、はっきりと聞こえる。ソロで歌ってもらい、僕が参加して彼らの歌をセッションした。
アンコールでは、4人でギターを抱え、フロアの四隅からお客さんを囲んで歌い、シークレットゲストのサックスのSMILEYが2階席から登場して、客席は爆発した。名づけて“4.スマ・サラウンド”だ。
アルペジオとささやきの歌から、4人+サックスのマックスの音までを自在に行き来できる自由さがあった。
ライヴ後、たくさんの反響をもらった。
「声を出してる方から声が聞こえる、楽器から音が聞こえるという、当たり前のことが新鮮だった (BBS)」
「ピアノの鍵盤にあたる爪の音まで聞こえた (ONEへのメール)」
7月に、大阪と名古屋でも〈Naked“eyes”〉のライヴをやった。名古屋では高橋研さんをゲストに迎えた。
音楽が本来持っている、そしていつの間にか感じなくなってしまった魔法の瞬間というものがある。歌が何かを震わせた時、僕とお客さんとの間で交感されるものだ。
ライヴの時、僕はいつもそれを感じようとしている。〈Naked“eyes”〉の場合、それをくっきりとした輪郭を持って感じることができる。
今後も僕は〈Naked“eyes”〉をシリーズとして展開していこうと思っている。
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