12月29日、2年9ヶ月ぶりのバンドライヴは、大分のバンドCOCK'Sとの共演だった。
彼らはそれぞれ仕事を持ったアマチュアバンドだ。このVoiceの「23年目の“初めまして” 07.25.2005」で書いたようないきさつがあり、去年の3月に僕は再び大分を訪れて彼らとプレイし、その後、熊本ではCOCK'SにサックスプレイヤーのSMILEYを加えてライヴをやった。
その熊本だけで実現したバンドライヴを東京でやるため、彼らを大分から呼んだ。
ライヴに来てくれたファンの人たちの中には、僕がアマチュアバンドとライヴをやることに疑問を感じていた人もいたという。だが、ライヴが終わった時には、多くの人たちがCOCK'Sのプレイに満足してくれたようだ。
新曲の〈オリオンのティアラ〉をCOCK'Sとプレイした。まだアコースティックバージョンしかなく、初めてバンドサウンドでやったことになる。
ライヴの1ヶ月ほど前、僕からアレンジの提案をし、COCK'Sがリハーサルした音源を何度も送ってもらい、メールでアレンジを修正し、本番前日のリハーサルで音を固めていった。
一緒にやる限り、単なるコピーバンドとしての彼らとプレイしたくはなかった。もちろんこれまでのステージの中で、彼らなりの提案でアレンジを変えたところもあったが、象徴として、まったく新しい曲でのコラボレーションをしたかった。
COCK'Sと同じステージに立つのは、今回で5回目になる。客席に向かって放射する空気とは別に、ステージの中でコンタクトし合う濃密な空気は、すでに僕をボーカリストとするバンドというものになってきた。
もちろん足りないものはたくさんある。荒くれたプレイは得意とするが、ミディアムテンポでのグルーヴはまだまだ足りない。
終演後、ボーカルの一郎君にこんな話をした。
「熊本でのライヴは、80パーセントの演奏で、お客さんに120パーセント伝わった。今回は70パーセントの演奏で、お客さんに110パーセント伝わった。どちらも100パーセントを越えたライヴをお客さんに届けることができたけど、演奏は100パーセントじゃなかった」
逆のこともある。プロフェッショナルとして100パーセントのプレイをしても、お客さんに伝わらないことだってある。
ライヴのおもしろさで、恐さでもある。
COCK'Sのプレイは、僕が今までやってきたバンドサウンドをすべて融合させたアレンジだ。彼らのプレイの中に、The Conxがいて、DADがいて、中野督夫率いたバンドがいる。そこに、今だからこそ表現できる新しいテイストを込めていった。
僕が年齢を重ねて変化してきたのと同じように、歌も変化し続けてきた。だからアルバムアレンジを再現することに意味はない。ただ今回は、COCK'Sとのプレイの中で、懐かしい息吹を感じることができた。心から楽しかった。その気持ちが、きっとお客さんにも伝わったと思っている。
今では、プロとアマチュアという区別自体が意味をなさなくなってきている。誰でもCDを出せるし、CDを出すことだけが表現方法ではなくなった。
違いがあるとすれば、それは心の底から人を揺り動かすか、そうでないかだ。
浜田裕介君、COCK'Sのみんな。これからもそれぞれの立ち位置で音楽を愛し続けてほしい。
そして僕は、君たちを揺さぶる歌を作り続けようと思う。